中国の景気刺激策―留意すべき点:竜河
中国政府の迅速かつ強力な景気刺激策のおかげで、代表的な株価指数である上海総合指数は年初来3割超す上昇を見せました。ただ、その背後に、いくつかの不安点も見え隠れています。
一、雇用問題
中国国務院は2月10日、20人以上の人員を削減する企業に対し、30日前に労働組合に、または全従業員に削減計画を説明することを義務付けました。その狙いは企業のリストラを抑制することにあるが、その副作用は言ってみれば若者の就職をより難しくしたことです。
2005年10月末、パリ郊外の移民街で起きた若者たちの暴動が、たちまち地方都市に拡大し、フランス全土数百ヶ所で暴動が起きました。その背景には、厳格な就業資格制度および労働者保護法制で若者の就職が難しくなったことと言われています。
中国中央農村工作指小組の陳錫文主任は2月2日、出稼ぎ労働者約1億3000万人のうち、失業などで春節前に帰省し、春節明け後も仕事がみつからない労働者が約2000万人に上ることを明らかにしました。その2000万人という数値は政府の発表で、実際にもっと多い可能性は十分にあります。巷で失業者が溢れると、大規模な暴動は心配されます。
二、地方財政
中国は、建国以来、今年で始めて地方の财政赤字を許すことになりました。
昨年末、中央政府が3年間で総額4兆元にのぼる景気刺激策を打ち出してから、各地方政府も追従し、合わせて総額18兆元(約252兆円)の投資計画をまとめました。地方財政がすでに火の車であるところが多く、無い袖が振れないとのことで、ここにきて中央政府は地方の财政赤字を容認し、現時点では、国が2000億元にのぼる地方債を代行して発行する案を検討しています(最終決定は3月に開かれる全人代に委ねます)。
おおやけにしていないですが、かなりの地方政府は既に数年前から赤字財政の状態が続いています。地方政府は都市建設、または業績記念碑みたいなプロジェクトを進めるため、前から銀行から借金を繰り返してきまして、将来数年間にわたる税収に相当する負債を抱えている地方も少なくありません。
中央政府に比べ、地方政府がそれほど制約または監督をうけないため、景気刺激という名目でおカネを手にしてとしても、本当はどこに使うのかは問題となります。
三、不動産市況
2009年に入ってから不動産市況は一段と落ち込みました。国家発展改革委員会が2月9日発表した2008年12月の主要70都市の不動産販売価格は前年同月に比べ0.4%下落し、05年7月に現在の調査形式になってから初めてマイナスに転じました。
不動産市況が悪化するにつれ、住宅ローンの不良債権化も進行しています。昨年12月末現在、上海市での不動産向け貸し出し総額の約1%が不良債権化しましたが、膨らんだ不良債権の3割前後は昨年第4四半期に発生したものです。
住宅建設は中国経済の牽引役にはもう再びなれないでいます。
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