12月の鉱工業生産動向をどう読む?
「かかし」です。
先週は悪い経済指標が相次ぎました。上場企業の10-12月決算も非常に厳しい状況です。ところが、終わってみれば日経平均株価は1週間で3.2%と大きく上昇しました。
良い株式指標で株式市場が上昇し、悪い経済指標で株式市場が下落してくれれば、とても単純明快なのですが、なかなか教科書どおりにはいかないようです。長年アナリストをやっていて、これにはずいぶん苦しめられました。
鉱工業生産動向という経済指標に注目してみましょう。
生産の増加は「良いシグナル」で株式市場の上昇要因であると思われがちです。しかし、出荷、つまり需要が弱い時は、生産の増加は在庫を膨らませるだけですから、株式市場は「悪いシグナル」とみなします。
生産の減少は「悪いシグナル」で株式市場の下落要因であると思われがちです。しかし、「悪いシグナル」であるのは、出荷の低迷に減産が追いつかない時だけです。この時にも在庫が膨らみます。
要は、鉱工業生産の数字だけでは、それが「良い」のか「悪い」のか「中立」なのかを判断できないということなのです。
先週金曜日に発表された12月の鉱工業生産動向はどうだったのでしょう?
まず生産の動きですが、厳しい状況です。原指数の前年同月比は-20.6%、「生産は急速に低下している」と経済産業省も真っ青です。
次に、数量ベースで出荷の増減率から在庫の増減率を差し引いた指標である「出荷在庫バランス」を見てみましょう。やはり厳しいですね。ただ2つの点に注目しています。(1)出荷の下落に減産がほぼ追いついている。(2)そのため、在庫の伸び率に頭打ちの兆しが見える。
そこで、金額ベースで出荷の増減率から在庫の増減率を差し引いた指標である「在庫循環モメンタム」を見てみましょう。様子がかなり異なります。出荷の下落に減産が追いついている点は同様なのですが、在庫の減速が加速しています。そのため、「在庫循環モメンタム」に下落がほぼ止まってしまいました。
その理由は、産出価格、つまり製品の出荷価格に比べて、投入価格、つまり原材料コストの下落幅がはるかに大きいためです。
だから何なんだ?ということになるわけですが、株式投資の観点から、12月の鉱工業生産を次のように理解しています。
(1) 生産の落ち込みは厳しい。
(2) しかし、出荷の減少に減産がほぼ追いついている。
(3) しかも、数量ベースの在庫の増加ピッチは減速している。金額ベースでの減 速は大幅。これは株式市場には「良いニュース」。
(4) したがって、12月の鉱工業生産動向を見て、過度に悲観的になる必要はないと思われる。
むしろ気になるのはこれからの動向です。今から12ヶ月後に生産が落ち着きを取り戻していて、現在の水準よりわずかでもよくなると、対前年同期比では現在の-20.6%から±ゼロの近辺まで大きく戻すことになります。大きな回復ですね。株式市場は実体の経済にとって先行指標であるならば、非常に近い将来にそのような展開を織り込み始める可能性があります。
悪い経済指標に過度に悲観的にならず、冷静に「次の一手」を考えたいものです。
かかし
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