豪ドル所感:津田 穣
終の棲家“豪ドル”
明日5日でシドニーに来て14年目に突入です。いや早いもんですね。ほんの2-3年のつもりで来たんですが、家族を呼び寄せて子供が学校に行き出して、もう気付いた時には抜き差しならない状況になっておりました。でも周りには20年、30年選手も結構いますけど。
ところで私もどちらかと言いますと為替畑、本ブログ主催者の野村さんのように“4番サード長島”ではなかったけれど、(まあ8番ライト柳田くらいでしょうか)早いもので、最初の銀行のバーレン支店(中近東)のディーリングルームに叩き込まれて右も左も分からないままに“yours” ”mine”を始めて早26年が経ちます。
本日は初日ですので“豪ドル所感”でも少し書いてみます。基本的に豪ドルは野村さんとか日本の銀行のディーリングルームにいた人ならお分かりでしょうが、若いディーラーの“登竜門”なんです。駆け出しのディーラーが豪ドルなど“周辺通貨”をまずトレーディング通貨として持たされて、そこで適性が認められればユーロ、円など“スター通貨”担当ディーラーに昇格していくわけです。一方どうしても“向かない”と判断された人間は他の業務に丁重に回されます。邦銀では何もディーラー職でなくても能力が発揮できる部署がたくさんありますから。
そんなわけで邦銀ディーラーにとっては1通過点である豪ドルがなぜか私のライフワークになりつつあるのも不思議なご縁。豪ドルは私の愛猫のDaisy(デージー―和名ひな菊)によく似ています。普段は可愛いのですが調子に乗ってふざけていると時々“ガキッ”とツメを立てます。
さて前置きはこれくらいにして、本日は手始めにこの13年間の豪ドルの動きを回顧してみます。私が豪州に来た1995年12月はちょうど保守党のジョン・ハワードが労働党のポール・キーティングから政権を奪回した年でした。
RBAのBulletinで当時のレートを調べてみますと豪ドルは74セント、75円といったところでした。それから今日までの豪ドルの動きは大きく3つのフェーズに分けられます。
① 1997年のアジア危機から2001年の国内景気後退にかけての下落局面。豪ドルは80セントから47セント台の史上安値に下落。豪ドル円も100円から55円台に下落です。市場では1AUD=0.30USDの声が聞かれました。アジア経済の停滞が世界不況につながるとの懸念が台頭。国際商品相場が下落し一方国内でもオリンピック後の反動とITブームに乗り遅れたオールドエコノミーとの位置づけから景気が後退、RBAは金融緩和を実施します。
② 2002年から今年7月までの上昇局面。豪ドルは今年7月に変動相場制以降後の高値98セント台に、また豪ドル円も昨年10月の107円台についで今年7月には104円台に上昇します。市場では1AUD=1USDの声が大半でした。この期間は世界経済が年5%で順調に拡大し中国を初めとする新興国の経済が急ピッチに成長し、国際商品相場もうなぎ登りで豪州は外需で潤います。インフレ懸念台頭からRBAも金融引き締めを実施し高金利通貨豪ドルに資金が流入しました。
③ そして三つ目は昨年8月に端を発するサブプライム問題の影響が今年7月あたりから顕著となる局面で豪ドル初め高金利通貨投資、いわゆるリスクアセットの投げが加速し豪ドルは60セントに暴落、急激な円キャリートレード巻き戻しから豪ドル円はほぼ50%減価して55円の史上安値を更新します。市場では1AUD=0.50USDの声が強いです。上のグラフを見ても今年7月からの豪ドルの下落の角度、スピードがいかに激しいものであったか。もちろん豪ドルのみならず米ドル高、円高が急激に進行したわけですが、この下落の速度、マグニチュードは前代未聞でしょう。
こうしてみますとこの13年資源通貨、高金利通貨そして悪名高い投機通貨である豪ドルはよく動きました。特に今年7月からの豪ドルの動きは“投機通貨の面目躍如”といったところでした。
(DAISY)=OZ cat
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コメント
バルボア様
昨日私の記事”豪ドル所感”に対してバルボア様から以下コメントをいただきましたが、ご返事を申し上げたところ、一度は公開されたのですが慣れない操作でバルボアのコメント及び私の返事が消えてしまいました。まことに申し訳ありませんが、再度バルボアさものコメントと返事を掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。
バルボア様からのコメント:
「非常に興味深いお話を有難うございます。次回を楽しみにしています。」
私のお返事:
「バルボア様
豪ドルを通して金融市場を見てみるのも面白いと思います。今度は是非バルボア様の豪ドル観も教えてください! 津田」
投稿: 津田 | 2008年12月 5日 (金) 13時58分