皆さんこんにちは?今年も残すところわずか、市場の方もクリスマス休暇を控えて今週が実質的に最後となるのではないでしょうか?
しかし米国が日本と並ぶ実質ゼロ金利政策をとり、10年債利回りが2%強にまで低下するとは年初どのくらいの人が想像していたでしょうか?野村さんもブログに書いてられましたが、日米の政策金利水準が並ぶのは忘れもしないプラザ合意(1985年)の日銀の円金利高め誘導以来です。当時ロンドンにいました私はさすがディーラーの鏡ですね?プラザ合意の週末をスペインで過ごしており、何が起こったのか全く分からず。ただ事前から日銀の円金利高め誘導観測はありましたから、当時先物ディーラーでありました私は金利差縮小を見越してリミット一杯にドル円の”取り”ポジションを持って休暇へ。月曜朝の新聞でドル円スワップ6m/sが前週の180ptsからparになったことを確認し悠々とオフィスに来たところ、先輩から「お前のポジションは他の銀行にcallされてヒットされたから”利食っておいたぞ”」とparより遥か上で消えていたのでありました。これが私のドル/円同金利水準の歴史的(?)思い出です。
しかし後世、今のドル円同水準をどのように回顧しているのか、興味がもたれます。私はこのところの米ドル下落をあまり水谷さんのように米国の滅亡(?)につなげないで、単にここまで米ドルが買われ過ぎた分のポジション調整が年末に向かって出ている、、位にしか思えませんが、私は鈍いのでしょうか??いずれにしても米国、中国が救いようのないディザスターになれば、その他諸国はもっとひどい状態になりますので、2国通貨間への影響は結局ニュートラルではないでしょうか?詭弁ですか?
さて話が長くなりましたが、今日は豪ドルの需給についてちょっと話します。
先日豪ドルは国際通貨ランキングで上から5番目と言いましたが、依然としてメジャーカレンシーとの取引量の差は歴然としています。なんでも昨年(9月時点)の一日の為替出来高(含むスワップ、オプション)は3兆2000億ドルと3年間で71%増加したそうです。そこでRBA Bulletinに出ています為替出来高(豪州国内の金融機関、非金融機関経由でスポット、アウトライト、スワップ、オプション含む)は一日平均、9月がAUD 92,116mio、8月がAUD 90,491mioだそうです。これは大体全体の3%弱、豪州以外での取引を勘案するとざっくりで世界全体の為替取扱高の5%。これはここ10年そんなに変わっていません。
豪州の国際収支を見てみますと歴史的に経常収支が赤字、資本収支が黒字と言う構造になっています。と言いますか証券投資の利払い、配当などの支払いのために所得収支は1980年以来黒字がありません。過去3年間の数字を見てみますと:
貿易収支 所得収支 経常収支 直接投資 証券(金融)投資 (unit mio AUD)
2005 -17,971 -30,759 -54,015 -2,282 53,638
2006 -13,186 -41,579 -53,577 4,164 61,076
2007 -20,712 -48,572 -67,189 19,620 -3,272
ただ貿易赤字は今年になって激減しており、8月、9月は黒字転しているところは日本の貿易黒字の激減と符合しており面白いところです。
さて豪州の実需為替について考えますとやはり輸出入、所得収支が大きく需給に関わってきます。一方資本収支については以前にABS(Australian Bureau of Statistics)の人間に質問したことがあるのですが、ざっくりと直接投資や証券投資などの投資関連で”売り”または”買い”為替となるポーションは相場レベルなどにより変動はあるものの、30%~40%程度と話していました。
つまり黒字の投資サイドの3-4割が豪ドル買い需要であるとすると経常赤字が補填できず国際収支上は豪ドル余剰が生じることになります。にもかかわらず2002年から今年上半期まで豪ドルを押し上げてきた需要は何だったのでしょうか?考えられるのは2003年から2006年あたりは本邦投資家向けに大量の”売り出し債”が発行されことです。これはオフショア(豪州以外)の発行体がメインでしたから、豪州国内の国際収支には反映されません。--当時残高2兆円規模--"売り出し債”はこちらの金融新聞においても”URIDASHI"と表記されるほど有名でした。データを見ますと特に2003年は”売り出し債”全体の63.3%が、また2004年も51.3%が豪ドル建て、ただ割合は徐々に減少して2005年は36.2%に。変わってNZD建、メキシコペソ建、南アランド建などが増加しました。
そして2005年以降、この”売り出し債”減少の穴埋めをした豪ドル買い需要の目玉が悪名高い”円キャリートレード”ではなかったのでしょうか?そしてサブプライム問題の拡大とともに円キャリートレードの大きな巻き戻しが入って豪ドルは暴落した、、、、。
私はこちらの邦銀に12年ほどおり、顧客為替も担当しておりましたが、輸出入為替にはいくつかの特徴があります。
①輸入(豪ドル売り)はコントラクトベースでカバーを取るのでまとまって大きな金額が出ない。また為替リスク自体日本の本社サイドで取るケースが最近増えている。
②豪州の輸出為替(豪ドル買い)の大玉は鉱山関係(主に石炭・鉄鉱石)、食肉、ウッドチップなどがメイン。輸出は結構まとまって出る。オプションを使って数年先までカバーするケースも。
③特に石炭、鉄鉱石は年末から年初にかけて長期計画に基づいた価格交渉が始まるので、12月半ば頃より、交渉の結果を見越してある程度の輸出カバー(豪ドル買い)を取る企業が多い。→12月は例年豪ドルが堅調になる。
④石炭・鉄鉱石はスポット物でも毎日手当買いが結構ある。プライスのfixingがシドニー時間のpm12:00-1:00やパース時間の午後(シドニーより2時間遅れ)行われることが多いのでシドニー昼から夕方まで豪ドルが堅調になることが多い。などなど
しかし当地でも1980年代後半から90年代初頭のバブル期にかけて日本から多くの不動産投資、直接投資が行われました。一時はシドニーやゴールドコーストの一流ホテルはほとんど冠に日本名が付いたくらいですが、いまではほとんどがシンガポールや中国、アメリカ資本の手に渡ってしまいました。数年前にある高層商業ビルの売却に絡んで10億豪ドルの豪ドル売り/円買いの市場カバーをワンショットで取ったことがありましたが、当時は豪ドル上昇トレンドの最中で100ポイント下がらなかった記憶があります。一日500ポイントも動く昨今とは隔世の感があります。
それでは
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