2009年を展望してみる:竜河
2009年の足音が聞こえてきましたが、どのような年になるのでしょう。
さて、人の手によるものを除けば、世の中にまっすぐに伸びるものはないそうです。その意味では、今年1年ベアマーケットに支配され続けてきた株式相場は、これからも下落し続ける可能性が低くなったと言えます。
その1つの理由はアメリカにあります。来年1月、アメリカで16年ぶりに共和党ブッシュ政権から民主党の“改革新人”への政権移譲が再び行われます。
では、92年の秋から93年春にかけて、ブッシュパパからクリントン氏へ政権交代が行われた際、NY株価はどう動いていたのか、答えは下のチャートのように、ボトムを付け反発し始めたことです。
無論、来年春先までの米株価動向はオバマ政権の出来に大きく影響されます。オバマ政権の政策能力と米国民の辛抱強さでシナリオを整理すると、以下のようになります。
こうして見ると、オバマ政権の発足に伴い、とりあえず、株価が一旦リバウンドする可能性は大きい。
オバマ政権にとって、最初の試練はビッグスリー対策でしょう。ブッシュ米大統領は19日、GMとクライスラーに最大174億ドル(約1兆5000億円)にのぼるつなぎ融資を発表しました。しかし、174億ドルではとても足りないため、結局、ブッシュ政権がしたのは問題の(オバマ次期政権への)先送りです。オバマ政権にとって、ビッグスリーを完全に救済した方が良いのか、それができるのか、あるいは、救済を諦め市場に任せた方が良いのか、難しい決定に迫られます。
また、来年になれば、マーケットは幾分冷静さを取り戻すでしょう。今年は洪水続きの1年でしたが、来年に洪水がまたやってくるにしても、一部では陸地が現れ、洪水後の惨状があらわになると同時に、どうすれば再建できるのかとある程度見当がつきます。これは、株式投資家にとって、どのセクターが実態に比べ売られすぎ、どのセクターがこれからも沈没し続けるのか、ある程度見分けができることを意味します。
来年の1つ大きな地殻変動は、米国債市場で起こるでしょう。
先日、筆者は、米国債について、下落一方の通貨で発行される債券を、一体、誰がこの超低金利で買い続けるでしょうと質問しました。
その答えの1つは中国政府です。米財務省が発表した10月の国際資本統計によると、10月末時点の米国債保有高は、中国が659億ドル増(日本は123億ドル増)の6,529億ドルで、2カ月連続首位でした。
しかし、昨日のロイター報道によれば、中国の10月末の外貨準備高は9月末に比べ約155億ドル少ない1兆8900億ドル以下となり、03年12月末以来、4年10カ月ぶりに減少しました。
また、オイルダラーの縮小も始まりました。
例えば、先月24日、ドバイ首長国が、政府債務100億ドル、政府系企業700億ドルで計800億ドルの債務があり、借入によって進めてきた大規模開発見直しの可能性を表明しました。
こうなれば、いよいよ、アメリカは諸外国政府が為替介入し、そこから得たドルをアメリカに還流することに期待せざるを得なくなります。さて、日本政府はどう動くでしょう。
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前回コメントのフォローアップ:
1、日経が底堅い動きになる ⇒ その通りになりました。
2、ドル円のクラッシュが起こらない ⇒ その通りになりました。
3、石油価格は反発のきっかけ待ち ⇒ さらに下落しました(暫くの辛抱が必要?)。
では、皆さん、良いお正月をお迎えください!
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